「保冷はしたい。でも冷たいご飯はおいしくない」 お弁当の保冷、どうする?

安心・安全とおいしさを両立するために、押さえておきたい温度・時間・水分の話
暑くなると心配なのが、お弁当の傷み。
家族のお弁当は特に気を使って、ついつい保冷剤を多めにお弁当と一緒に保冷バッグにイン。
でも家族からは
「お弁当が冷たすぎて美味しくなかった」
「ごはんが硬くてパサパサする」
と、不満の声。そんな経験ありませんか?

電子レンジが使えれば温めて解決できますが、学生や車の中でお弁当を食べるなど電子レンジを使えない場合は「できるだけ冷たくする」ではおいしさが伴いません。
おいしさと安全の両立は、どう考えればよいのでしょうか。
ポイントは温度だけに注目するのではなく、「温度・水分・栄養分」と「時間」を一緒に考えること。
お弁当の食中毒対策は「温度・水分・時間」で考える
お家のお弁当の過酷な条件とは
基本的に家庭で作るお弁当は作ってすぐには食べません。
ここが街の作りたてを持ち帰るタイプの「お弁当屋さんのお弁当」と違うところ。
このタイプの持ち帰り弁当は家に持ち帰ってすぐ食べることを想定していますので、消費期限は2~3時間と短くなっています。
一方、家庭のお弁当は朝7時頃に家を出てお昼に食べるとして約5時間。その間、
・家から学校や職場まで持ち運ぶ
・ロッカーや机、バッグの中で保管
・部活や外回りなどで外や車の中に置かれることもある
・冷蔵庫、電子レンジが使えない
という過酷な環境に置かれます。
特に最近は気温の高い日が多く、夏以外でも細菌が増えやすい環境になってしまうことが増えました。「作ってから食べるまでをどう管理するか」がますます重要になっています。
厚生労働省も、調理した食品は速やかに10℃以下まで冷やすか、65℃以上で保管し、食中毒菌が特に増えやすい20~50℃の温度帯に置く時間を短くするよう案内しています。
家庭のお弁当は作ってから食べるまでの時間が長く、食品工場のように徹底した衛生環境の整備も難しい。だからこそ、食中毒のリスクを抑えるためには「しっかり冷やす」ことが大切になります。
「じゃあ、冷たければ冷たいほどいいのか?」
そうとも限らないのがこの問題の複雑なところなのです。
食中毒菌が増える条件は「温度・水分・栄養分」+時間

お弁当に限らず食中毒対策を考えるときに覚えておきたいのが
細菌やウィルスを「つけない」「増やさない」「やっつける」の3原則。
この3原則の中の「増やさない」に関係するのが
【温度・水分・栄養分】の3つ。
そしてもう一つ、重要なのが【時間】です。
【温度】
細菌は温度によって増殖スピードが変わります。
だからお弁当は調理後になるべく早く冷まし、保冷剤や保冷バッグを使うことで、作ってから食べるまでの間、増殖しやすい温度帯に長く置かないことが重要です。
【水分】
お弁当で水分というと、おかずの汁気に意識が向きがちですが、詰めた後に野菜などから出てくる水分、温かいごはんやおかずから出る蒸気が冷めてできる水滴も忘れてはいけません。
農林水産省も、おかずの汁気を切ることや温かいご飯やおかずを詰めると蒸気が水分になり傷みの原因になることを示しています。
【栄養分】
ごはん、肉、魚、野菜など、お弁当は栄養分のかたまりです。
栄養分をなくすことはできませんよね。
だから、私たちにできることは
・温度を管理すること。
・余分な水分を与えないこと。
そして、
・細菌などが増える条件が揃った状態をなるべく短くすること。
だと考えます。
「冷たい=おいしい」ではない? お弁当の温度とおいしさの関係
冷やしすぎると「おいしさ」はどうなる?
ここが家族の不満につながるポイントです。
お弁当が傷まないように保冷することは大切。
でもお弁当は「低温=おいしい」ではありません。
食品は温度によって
- 味の感じ方
- 香り
- 硬さ
- 油の状態
- 食感
などが変わります。
特にお弁当の主食によく使うごはんは、低温にすると食感が変わりやすい食品です。
米飯は低温になると、でんぷんの老化によって硬くパサパサとした食感になります。
おかずも味が薄く感じたり、油が浮いたり、硬くなったり。
残念なことに安全のために温度を低くすると、どうしてもお弁当が美味しくないと感じやすくなるのです。
ここで参考になるのが、コンビニのおにぎりです。
コンビニのおにぎりを思い浮かべてください。
おにぎりやお弁当の棚はドリンクやデザートの棚ほど冷たく冷やされていませんよね。
大手コンビニチェーンのセブンイ-レブンは公式サイトで
安全とおいしさのために、おにぎりを製造~販売まで「20℃前後」で徹底して温度管理している。と説明しています。
さらに農林水産省の資料にも、流通の現場で米飯が硬くなりにくい温度として16℃~22℃程度で管理されている例が紹介されています。
ここから、「ごはんは冷たすぎると美味しさを損なう」ことがわかります。
ではお弁当も20℃なら安心なの?
コンビニのおにぎりが20℃前後で管理されているからといって
「じゃあ、お家のお弁当も20℃なら大丈夫」
とはなりません。
まず、農林水産省も16~22℃という温度帯は安全の基準ではなく、ごはんが硬くなりにくい温度であって、この温度でも微生物(細菌やウイルス、カビなど)は繁殖し得ると説明しています。
また、コンビニのおにぎりは製造段階から徹底して衛生・温度管理されています。とてもお家で真似できないレベルですから、家庭のお弁当とは条件が違います。
「10℃以下」と「食べておいしい温度」は同じではない

厚生労働省は、家庭での食中毒予防について、冷やして食べる料理は10℃以下を目安と案内しています。
これは重要な目安ですが、10℃以下=おいしい温度という意味ではありません。
10℃以下に冷やしておいしい食品もあれば、ごはんのように低温によって食感が変わる食品もあります。
だからこそ、家庭のお弁当においては
「何℃なら一番おいしい?」だけでもなく、「何℃なら絶対安全?」だけでもない。
食品衛生上の適切な低温管理を基本にしながら、
・しっかりと加熱ができて冷めてもおいしい料理を選び蒸気や汁気を減らすなど、
料理側からも工夫する。
・作ってから食べるまでの時間をなるべく短くする。
これが現実的だといえます。
安全とおいしさを両立させる、お弁当5つのコツ
1.冷めてもおいしい工夫をする
冷めていても食感があると美味しく感じられるもの。揚げ物や焼き物などは冷めても比較的食感を保ちやすいのでおススメです。
お肉は冷めたときに脂が表面に固まっているとおいしさが半減。脂身の少ない部位を使う。湯通しして油を落としてから調理する。調理後に脂をキッチンペーパーなどで拭き取るのも効果的です。
おかずの味付けも少し工夫しましょう。甘みは冷めると感じにくくなる一方、塩味は冷めると強く感じやすくなるため、温かい時と同じ味付けがお弁当にも適しているとは限りません。
甘みと同様に香りも冷めると感じにくくなるので、大葉やゴマ、ショウガなど香りの強い食材を使ったメニューも喜ばれます。
2.汁気を減らして、余分な水分を残さない
煮物や和え物などは、汁気をしっかり切ってから詰めましょう。私は煮物を軽く炒って水分を飛ばしたり、和えごろもの中にゴマや鰹節など水分を吸うものを通常より多く入れたりします。仕切りやカップを使うのも有効です。
水分を減らし、コントロールすることは食中毒対策だけでなく、
「おかずの味が混ざらない」
「ご飯がおかずの汁気でべちゃっとしにくい」
という、おいしさの面でもメリットがあります。
3.冷めても美味しいごはんを炊く
お米には冷めてもちもちとした食感を保ちやすい品種があります。低アミロース米とよばれるお米はお弁当やおにぎりにおすすめの品種です。
お家で普段食べているお米が低アミロース米でない場合は、もち米を少し混ぜて炊く方法もあります。
4.おかずやご飯は、蒸気が出なくなってからお弁当箱に詰める
ここは意外と誤解されているポイントです。
お弁当はお弁当箱に詰めてから冷ますのではなく、冷めたものをお弁当箱に詰めるがベスト。
お皿に載せてラップをせずにレンジで温めたフライをお箸で持ち上げたら、フライがあったところに水滴がついていたことありませんか?
それと同じようにお弁当箱でも温かいものを入れると、お弁当箱の側面や底面に蒸気がぶつかり水分が発生します。

この隠れた水分は見落とされがち。
だから、「フタを開けて冷ます」より、「お弁当箱に詰める前に蒸気を逃がしておく」ことを習慣にしましょう。
農林水産省も、ご飯やおかずを温かいうちに詰めると、蒸気が弁当箱内で水分となり、傷みの原因になるため、冷ましてから詰めるよう案内しています。


5.保冷剤と保冷バッグを組み合わせる
保冷剤は、冷やすためのもの。
保冷バッグは、外から入ってくる熱の影響を抑え、中の冷気を逃さないためのもの。
それぞれ役割が違います。

家庭のお弁当のように長時間持ち歩く場合には、保冷剤と保冷バッグを活用し、菌が増えやすい温度になっている時間をできるだけ短くすることが大切です。
保冷剤は素材や形状による違いの他に、温度による違いがあります。
お弁当に適しているのはケーキ屋さんなどでもらう保冷剤のような0℃タイプと呼ばれるもので、冷蔵温度帯を維持しやすく設計されています。
保冷剤には他に氷点下タイプと呼ばれるものがありますが、アイスクリームや冷凍食品を長時間キープするためのものですので、お弁当には冷たすぎてしまいます。
また、保冷バッグは断熱材がしっかりと入ったものがおすすめです。
断熱材が少ないものは、持ち運びや保管の際にかさばらない反面、外気温の影響を強く受けたり、保冷剤で冷やされた保冷バッグの中と外気の温度差で結露しやすくなります。
「保冷剤を入れたから大丈夫!」ではなく、
お弁当を入れるバッグ、保冷剤、持ち歩く時間
をセットで考えましょう。


電子レンジが使えないお弁当だからこそ、「冷めてもおいしい」を考える
中高生のお弁当も外で働く家族のお弁当も、必ずしも電子レンジが使えるとは限りません。
つまり、「昼に温めればおいしくなる」という切り札がないことがあるのです。
だからこそお弁当は「温かい料理を冷たくして食べる」のではなく、
「冷めてもおいしいを作る」
と考えると、保冷とおいしさは対立しにくくなります。
お弁当の保冷・安全Q&A
大切なのはお弁当の温度が適切に保たれていたか、食べるまでにどれぐらいの時間が経っているかです。
「○℃を一瞬超えたら即危険」という単純な線引きではありません。けれども食中毒菌が増えやすい温度の状態が長く続くことは避ける必要があります。
それよりも食中毒菌が増えやすい温度になっている時間を短くすることが重要です。
一旦増えてしまった食中毒菌は後から冷たくしても死滅しませんし、菌が増える時に毒素を出す菌もいます。
厚生労働省は、食中毒菌が20~50℃でよく増えるとして、調理後の食品を10℃以下または65℃以上で管理することを示しています。
温かいご飯やおかずを詰めると、蒸気が容器内で水分になり結露することがあります。そして、結露が生じるのはフタだけでなく、内側の側面や底面にも生じます。
農林水産省でも、料理を冷ましてから弁当箱に詰めるよう案内しています。
まとめ|お弁当は「安全においしく!」
保冷はしたい。でも、冷たいご飯はおいしくない。
そんなお弁当の悩みは、保冷するか、しないかの二択で考える必要はありません。
安全のための食中毒予防の3原則「つけない」「ふやさない」「やっつける」を基本にしながら、冷めても美味しい料理を選び、保冷バッグや保冷剤を上手に組み合わせて【温度】、汁気や蒸気をコントロールすることで【水分】、なるべく早く食べることで【時間】を管理する。
こうした工夫を組み合わせて、安全とおいしさの両立を目指しましょう!
執筆者紹介TABERUNY(タベルニー)編集部
お弁当箱専門店に勤め家族のお弁当も毎日作る365日お弁当まみれなスタッフが、業務や日々のお弁当作りから得た『毎日を美味しく・楽しく・ワクワクにする』お弁当にまつわる情報をお届けいたします。今日もみんなでお弁当食べるにー!